10.02.2012@
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日本のオフィーリア好きは、やっぱり夏目漱石が根付かせたのかな。それともランボーの詩を訳した中原中也だろうか。
ミレイの描いた「オフィーリア」に群がる人々はみんな同じことをいう。
「美しい花」
「美しいオフィーリア」
これが常識なんだろうか、と思っていたら、よかった、よかった。やっぱり「美のオフィーリア賛歌」じゃないよ、とあった。
このオフィーリアに扮した人は英国の女優で、メアリ・キャサリン・ボルトン。
このタイトルも「オフィーリアのメアリ・キャサリン・ボルトン」(1813年)です。
白いドレスに花篭を持っている。
結局は女優の肖像画だから、「狂気」と「水」の気配はないものの、「花の女神フローラ」っぽい。
この記事にあるのです。
「オフィーリア 水の精 花の女神」
それで「美のオフィーリア賛歌」じゃないっていうのが
「オフィーリア Ophelia」
引用させていただくと
「わたしは溺死という悲劇的な醜さの手前にいる「儚い美しさ」(ヴァニタス)を描いたのだと思います。
(略)
ミレイに限らず、画家たちは「オフィーリアの美」を賛美しているのではなく、「女性を象徴する水死のイメージ」を賛美し、「女性の狂気の無邪気さと怪しさ」を賛美し、「女性を象徴する生殖と性愛」の対象として賛美していたのでしょう。」
あぁ、そうかって喜んじゃいました。
ロセッティ 「ハムレットとオフィーリア」 1858年
オフィーリアはとても冷酷な態度でハムレットに手紙を返します。ハムレットの困惑した顔。ロセッティの版画。
祈祷書を手に、手紙を返すオフィーリアの名場面のお話しはこちら。
「シェイクスピア「ハムレット」から 愛しのオフィーリア」
ロセッティの妻エリザベス・シダルは、ミレイの「オフィーリア」のモデルですが、謎の死を遂げています。
このミレイのオフィーリアにインスピレーションを受けた音楽っていうのもあったんだ。
「ミレイ オフィーリアの音楽」
この謎の死に、ダンテ・ガブリエル・ロセッティは、「神曲」で有名なダンテの恋人ベアトリーチェをエリザベスに重ねて思い出を作品にしています。
こちらの記事にはロセッティのベアトリーチェがある!しかも祭壇画のようにプレデッラ部分があったんだ!
「ダンテの神曲 地獄編トピック」
このロセッティの作品からわかるように、このオフィーリアはハムレットを見捨てた場面。いつの間に、日本では「オフィーリアが見捨てられて」に変わったのかな?
記事「オフィーリア Ophelia」でも、ここからリンクされている記事には、「オフィーリアが見捨てた」とあります。
ところが、次の場面のハムレットの劇中劇のシーンではハムレットがオフィーリアの横で観劇している。
こちらの記事「詩は有声の絵、絵画は無声の詩 ハムレットから」にダニエル・マクリース(Daniel Maclise)の描いたハムレットの劇中劇の作品が掲載されています。その作品は劇中劇で役者が演じているところまで描かれています。
膝の近くまで頭を寄せて、手紙を返したオフィーリアはそんなことも忘れているかのように。
しかも空々しい表情は、何を考えているんだろうと思わせる。
ダニエル・マクリースの描いた劇中劇のオフィーリアは、どちらかというと穏やかにハムレットをみていた気がします。
ハムレットは気が狂ったふりをしますが、結局は死んでいく。オフィーリアは本当に気が狂って死んでいく。
ハムレットは母親、オフィーリアは父親、それぞれ異性の親が絡んだ心の悩み。記事「オフィーリア Ophelia」ではエディプス・コンプレックスだとあったが、そうかもしれない。
そして二人はそれぞれ男と女の死に方にふさわしく亡くなっていく。ハムレットは剣で、オフィーリアは水で。