芋虫 (The Caterpillar)のマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)
「Alice」 VOGUE 2003 by アニー・リーボヴィッツ (Annie Leibovitz)
(c)www.style.com/Vogue
今年ももうすぐ終わってしまう・・・、ということはティム・バートンのアリスももうすぐってこと。
前回記事を書いたら、アニーー・リーボヴィッツのアリスを紹介しているものがたくさんあって、ようやく1枚アップできるようになりました。
第5章 芋虫からの助言 “Advice from a Caterpillar”に登場する、いもむしのモデルがマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)で、アリスは彼のデザインしたシフォンのミニドレスを着てる。2003年にVOGUEで特集になったらしい。
1997年からはルイ・ヴィトンのプレタポルテのデザイナーをしながら、「マーク・ジェイコブス」のブランドを立ち上げているけど、まじに高かった。50%OFFのニットが40,000超えた。
マーク・ジェイコブズはこのくらいにして・・・。
今日は第5章のおはなしを。というかKAFKAさんが第6章を意訳して、すてきな挿画をアップしているので連続させたいって思ったのですが、訳はご勘弁を。
KAFKAさん 不思議の国のアリス 第6章 チェシャ猫登場
なお、もうひとりの濃いキャラクター公爵夫人についてのモデルだった伯爵夫人とそのかっこいい肖像画のはか、彼女の生涯も紹介されています。
ルイス・キャロルが画いたいもむし
邦訳では芋虫の助言のほかに、イモムシの入れ知恵なんていうタイトルもあるようです。
第4章の白兎、ビルをおつかいにの最後に登場するイモムシで、どういうキャラクターなのかがわかります。
アリスはこのときまともな身の丈ではありません。
「ワタシヲオノミ」
「ワタシヲオタベ」
こんなかんじで背が大きくなったり、小さくなったりで、イモムシとの出会いは、小さくなったアリスが食べ物を探している途中。
おおぶりのキノコが一本。背伸びをすると、そこには大きな青い芋虫が。ながい水煙管をゆっくり静かにくゆらせている。
すべてのものに関心がない。世捨て人のようなイモムシ。ここで第3章はお終い。
こうして第4章がはじまります。
画像引用 不思議の国のアリス 新樹社
第5章 イモムシの忠告 P85 画 作場知生
ワタシは、難しく勧考えないタイプなんで、言語論とか論理とか抜きで。いえ、手抜きで。
イモムシとアリスは互いを凝視したまま。 一言も口を開かずに。
この沈黙に耐えかねたのか 水煙管をはすしたイモムシは 眠そうな声で、嫌々「誰?」と聞く
アリスは嫌々聞かれたもので これでは答える気もなくて それで、ちょっとはにかんで
「あのう、わからないんです。 今朝起きたときはわかるんですけど そのあと、何度も変身して。」
こんなやりとりからはじまって
「とすると、自分のからだの大きさが変わったっていうんだ。
「そう思う。覚えていようにも思い出せないし、10分もおなじ大きさでいられないんだもの。」
どんなことを覚えていないんだい?」
「さっき、"ごらんかわいい蜜蜂が"って暗誦した詩がもう覚えていない。」
「じゃぁ。"ウィリアム父さん"を暗誦してごらん。」
アリスが暗誦するウィリアム父さん 空中回転とウナギ
ジョン・テニエルの挿絵
若いものが言いました。
「ウィリアム父さん いい年だ。白髪になり 逆立ちとは、お年に似合わぬことをする。」
ウィリアム父さん、言うことに
「昔は頭が大切で、いまじゃ頭は空っぽだ。だから逆立ちできるのさ。」
若いものが言いました。
「くどいけれど、いいお年。その太ったカラダで空中回転 出入りするのも軽業だ。」
賢い父さん、言うことに
「この膏薬のおかげでね、カラダはこんなに柔らかい。一箱たった一シリング、どうだ二箱買わないか?」
若いものが言いました。
「アゴもガクガク、もういいお年。」
「ガチョウを骨ごと一匹食べる。それは一体どうしたことで。」
ウィリアム父さん、言うことに
「法律好きが幸いに、女房相手に議論して、おかげでアゴはこのとおり。」
若いものが言いました。
「目も良く見え、鼻にはウナギをあやつって、たいした芸当お手の物。」
ウィリアム父さん、言うことに
「三つも答えた、さっさと失せろ。
ヒマなおまえに付き合うもんか。
さぁ行け。ここから蹴落とすぞ。」
アーサー・ラッカムの挿絵
このウィリアム父さんを暗誦しましたが、実は桂冠詩人ロバート・サウジーの「老年の慰めはいかに得らるるや」を暗誦しようとしたアリスでした。この詩は「ウィリアム老翁」というよびかけから始まります。
この詩はアリスには当然でてきません。「違うね。」というイモムシと「違ったかしら」というアリスでつぎの場面にうつるからです。
教訓詩 老年の慰めはいかに得らるるや
「ウィリアム老翁 いかにもご長寿」 若きものの申しけり
「わずかなる御髪も 灰色に染まりぬ しかし御身はどこまでも健やかに過ごし給う
いざ こと間はむ そのわけを」
「若かりし頃を思いしは」ウィリアム老翁が語るには
「光陰矢のごとく青春は儚し さればわが体と力を みだりに費やさざりき
老いてとぼしくなるまじて」
最初の部分です。こんな詩なんです。
イモムシも老翁ってところでしょうか。気難しく、頑固で、若い人に忍耐を強いるような老人をルイス・キャロルはえがいたのかな。
老人に対する教訓詩としても、これから老いる全ての人、あるいは老人に接する態度として若い人への教訓詩としても、いろいろな読み方で変わってくる。
当のアリスも忍耐強くイモムシに苛々しながら、ようやく身の丈がかわる話しを得たけれど。
画像引用 不思議の国のアリス 新樹社
第5章 イモムシの忠告 P99 画 作場知生
イモムシが去り際に・・・。
「もう片方は高くなり、もう片方は低くなる」とつぶやいた。
アリスは「何が」と聞き返します。
「キノコさ。」
さて、どっちかなとまず右。
身の丈は変わったけれど、こうじゃない。
首からかかとまで縮んだわけ。
腕はなくとも手だけが残ったから良かったものの。
やっとのことで左をかじると・・・。
挿絵 ジョン・テニエル
ジョン・テニエルの挿絵はひかえめ。
アリスは蛇よりもなによりもながい首。森全体を見渡せるのですから。
そこへ鳩がやってきて、わたしの卵を狙っているとアリスを蛇呼ばわり。
かろうじてキノコをかじりながら、4フィートまで身の丈を調整しつつ、広場にでることができました。
そうして見つけた家がKAFKAさんの記事、豚と胡椒の公爵夫人の家だったんです。
そして公爵夫人の家に向かうまでに9インチまで身の丈をかえます。ご苦労さま。
さて、アリスの記事はこれで3つ目
Alice in Wonderland
ティム・バートン アリス
この不思議の国のアリスが、アリス・リデルのクリスマスプレゼントとして贈られたのが1864年。
1862年に、ドジソンことルイス・キャロルは同僚のロビンスン・ダックワース(不思議の国のアリスではあひるで登場)をメンバーに加え、ロリーナ、アリス、イーディスの3姉妹とともに、ボートに乗り込みます。
ダックワースは回想で
「我々のボートのコックス役アリス・リデルのために拵えられ、私の肩越しに語られていった。これは君の即興ですかと尋ねると、そう。漕いではつくり、つくっては漕ぐという具合でね。と答えた」と言ったらしい。
また、
「アリスが ”ね、ドジソンさん、アリスのお話を私に書いてほしいの"と言った。 (略) 彼はその日の午後を生き生きしたものにしたあの面白い話の思い出せるところを、ほとんど夜を徹してしまったそうだ。」とも回想。
サルバドール・ダリ 不思議の国のアリス 1969
イモムシ
以前に記事でも紹介した作家ジョージ・マクドナルドですが、ルイス・キャロルとは親しく、彼にアリスへのプレゼント「地底の国のアリス」を書き上げ、意見を求めました。
それが1863年2月のこと。1864年に仔牛皮の表紙にルイス・キャロルの手書きとイラストがアリスに渡され(残念なことに、のちに新しいのが渡されたために回収されたよう)、1865年に「不思議の国のアリス」が自費出版で出されたわけ。
ドジソンの日記には、マクドナルド一家が出版に賛成でとあったようですが、ダックワースの回想では、ヘンリー・キングズレーとダックワークということになっている?
たぶん、
ジョージ・マクドナルドでしょう!
この出版で、加筆した「不思議の国のアリス」にジョン・テニエルが挿絵を依頼され、アリスには知人の娘でメアリー・ヒルトン・バドコックをルイス・キャロルは提案。テニエルとルイス・キャロルは何度か揉めたよう。でも完成。
「地底の国のアリス」は、1886年に出版されたとあります。
1864年のことですが、とうとうリデル夫人は三姉妹にルイス・キャロルとのボート遊びを禁止。
そして1865年のルイス・キャロルの日記。
「(アリスは)とても変わってしまった。つまらなくなってしまった。あのおきまりの厄介な時期なのだろう。」と。